8月28日にブラジル国内で行われた試合中に、複数のサポーターが人種差別発言をしたことが物議を醸している。中傷のターゲットにされたサントスのGKアラーニャは試合後、涙ながらに“犯人たち”の言動を嘆いた。
人種差別発言があったのは、ブラジル南部(リオ・グランジ・ド・スウ州)のポルト・アレグレで行われたコパ・ド・ブラジウの決勝トーナメント1回戦 1st.Leg「グレミオ vs サントス」の試合中。サントスの2点リードで迎えた試合終了間際の89分に、それは起こった。
ゴール裏のスタンドを水色に染めたグレミスタ(グレミオのサポーター)から異口同音に“猿”を意味するポルトガル語「macaco(マカーコ)」が響き渡った。サントスのゴールを守るGKアラーニャはスタンドを見上げて身振り手振りを交えて抗議したが、マカーコの連呼は収まらず、アラーニャは主審のほうへ駆け寄って人種差別発言への対応を強く要求した。
マカーコと叫ぶ声は思いのほか大きく、ベンチに下がっていたホビーニョが怒りの表情でベンチから飛び出し、オズワウド・ジ・オリベイラ監督らになだめられる一幕まで見られた。
マカーコを連呼するグレミスタに対してはスタジアムのスタッフなどが口頭で注意すべく近づいたものの、主審はスタンドに近づこうとせずGKアラーニャやMFアロウカと口論に発展する場面もあった。一連の出来事を受けて試合は2分ほど中断した。
試合終了後、報道陣に囲まれたアラーニャは目に涙を浮かべながら次のように心境を語った。
「このスタジアムにいた全員に聞こえたと思うが、一部の観客から『macaco(猿)』とののしられた。明確な人種差別であると考えるし、この事実をとても残念に思う。グレミスタに人種差別主義者が複数いることはよくわかった」
この人種差別に不快感を示したのはアラーニャだけではない。サントスのDFエドゥ・ドラセーナは「我々は民主主義の国で暮らしている。肌の色は何の関係もないのに、このような差別がサッカーの試合中に起こるなんて非常に残念だ。このような差別はサッカーから排除すべきであり、差別発言をした者は金輪際スタジアムに入場させてはいけない」と苦言を呈した。
ホビーニョは「あの発言は差別である上に侮辱でもある。最近も南米で人種差別が複数あったことは知っているけど、“肌の色で人間は区別されない”ということを全ての人が心に刻むべきだ」と激怒。
そして3月の試合中に自身が人種差別発言の“被害者”となったサントスのMFアロウカは、「決して受け入れることはできない。今回の差別発言は悪質であり、警察などの当局が明確な行動を起こしてくれることを期待している。法的な対処をしなければならない事態であると認識している」と言及している。