ウルグアイの名門ダヌービオのオスカル・クルーチェ会長は5日、先の試合中に所属選手が相手選手に対して人種差別発言に及んだことを認めるコメントを発表した。
騒動の発端となったのは、4月1日に行われたコパ・リベルタドーレスのグループリーグ「コリンチャンス vs ダヌービオ」の前半24分頃。ダヌービオのゴール前でコリンチャンスがフリーキックを得た際に、DFクリスティアン・ゴンサーレス(ダヌービオ)がブラジル代表MFエリーアス(コリンチャンス)と言い合いになった。そのとき、クリスティアン・ゴンサーレスはエリーアスを睨みつけながら何かをつぶやいた。
これを受けて激昂したエリーアスは、執拗にクリスティアン・ゴンサーレスに詰め寄り鬼気迫る剣幕で激しく抗議を始めた。第三者が仲裁に入ってもエリーアスの怒りは収まらず、何度か詰め寄ったのちにエリーアスは主審に近づいて事の全容を報告した。一連の出来事で試合は3分ほど停滞した。
試合後にエリーアスがメディアを通して、人種差別発言を受けた旨を公表。ほどなくしてメディアが流した試合映像には、クリスティアン・ゴンサーレスがエリーアスに向かって「 macaco(マカーコ)」と言っているであろう口の動きがハッキリと映っていた。
macaco はブラジル・ポルトガル語で「猿」を意味する単語だ。アルゼンチンの公用語であるスペイン語で「猿」は「mono(モノ)」と表現するため、加害者が意図的にポルトガル語で攻撃したとも推察できる。
この件についてダヌービオのクルーチェ会長は5日、コメントを発表。「会長として所属選手のことは守ってやりたいが、今回は看過できない。彼はエリーアスに向かって“macaco”と言っただろう」と述べて、クリスティアン・ゴンサーレスが発した人種差別発言について認めた。
同会長はクリスティアン・ゴンサーレスについて「私が彼の言動を正当化することはない。あるまじき発言に対しては罰金を科すことで責任をとらせるつもりだ」と言及。ペナルティを科す意向を明らかにした。
今回被害者になってしまったエリーアスは、クリスティアン・ゴンサーレスが18歳とまだ若いことに触れて次のような見解を発表している。
「言われた瞬間は頭に血が上ったが、彼はまだ若すぎるからね。今後、精神面が成熟することで自分の犯した言動の愚かさを自発的に気づいてもらえればと願っている」
この件についてエリーアスとコリンチャンスは警察に被害届を出さないとしているが、CONMEBOL (南米サッカー連盟)は調査を始める意向を示している。
ポルトガル語の「macaco」発言による人種差別は、昨年8月にブラジル国内でも似たような事件が発生している。南米大陸における人種差別問題の根は深そうだ。